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- 月刊誌『都市問題』
- 第 92 巻 第 8 号 / 2001年08月号
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特 集
特集 : 土地利用規制と自治体の対応−都市計画法の改正を踏まえて
内 容
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論文 都市計画法改正と市民合意、市民参加のシステムとプロセス 著者 市民活動法人 東京ランポ 分権まちづくり研究会 シミンカツドウホウジントウキョウランポブンケンマチヅクリケンキュウカイ 役職 文責ランポ理事 伊藤久雄 特集名 土地利用規制と自治体の対応−都市計画法の改正を踏まえて -
論文 土地利用規制と自治体−「近代化主義」と「地域主義」の対抗 著者 鈴木 庸夫 スズキツネオ 役職 千葉大学法経学部教授 特集名 土地利用規制と自治体の対応−都市計画法の改正を踏まえて -
論文 改正都市計画法と自治体の対応−まちづくり条例の今後の展開をめぐって 著者 室地 隆彦 ムロチタカヒコ 役職 練馬区都市整備部都市計画課長 特集名 土地利用規制と自治体の対応−都市計画法の改正を踏まえて -
論文 開発許可基準の改正を起因とする自治体の対応 著者 内海 麻利 ウチウミマリ 役職 横浜国立大学大学院工学研究院非常勤講師 特集名 土地利用規制と自治体の対応−都市計画法の改正を踏まえて -
論文 地方都市における土地利用規制と線引き問題 著者 阿部 成治 アベジョウジ 役職 福島大学教育学部教授 特集名 土地利用規制と自治体の対応−都市計画法の改正を踏まえて -
論文 フィリピンにおける「ストリートチルドレン」の社会問題化 著者 山口 恵子 ヤマグチケイコ 役職 東京都立大学大学院社会科学研究科博士過程 -
論文 「NPO」(特定非営利活動法人)支援の課題と展望 著者 出井 信夫 イデイノブオ 役職 新潟産業大学経済学部助教授
その他
- 図書紹介
時事問題
文献情報
特集 : 土地利用規制と自治体の対応−都市計画法の改正を踏まえて
本号では、自治体による土地利用のコントロールについて、近時の都市計画法の改正も踏まえ、考えてみたい。
この問題が周知されるようになったのは、1970年代以降に地方自治体で展開された、宅地開発指導要綱を始めとした種々の指導要綱に基づく要綱行政がその出発点であると考えられる。これに対して1983年には建設省から宅地開発指導要綱に関する是正通達が出された。それをきっかけに、法令の不備を補う手法を開発した自治体とそれを公式には認めようとしない建設省の対応の是非が、多くの議論を呼び起こした。
その後、各地でいわゆるまちづくり条例が隆盛を迎える。それらは、住民の参加を謳った宣言条例、要綱と連動して受益者負担や実質的な権利制限措置を予定するもの、さらにはマスタープランの策定と基本構想の策定とのリンクを試みているものなどさまざまである。
ここ数年、地方分権・規制緩和の要請に応える形で、都市計画分野では法制度の改正が繰り返され、また、いわゆる地方分権一括法の施行に伴い機関委任事務が廃止された結果、都市計画関連の事務についてはそのほとんどが自治事務に整理された。そこで現在は、国の法体系とその内容に多様性と厚みを見せるまちづくり条例との関係をどのように整理するかが、都市計画行政・研究において、1つの重要な論点となっていると言えよう。
地域のニーズ・実情に応じた条例での対応に関して、法制度は原則として、参加手続の上乗せについてはより充実した条例制定を歓迎する傾向にあるが、権利制限を伴うものについては政令で定める基準に従うことを望ましいと考えているようである(都市計画中央審議会答申、国土交通省都市計画運用指針)。一方で、自治体では、政令で定める内容に従う範囲ではあるが、その許可基準に関して条例への委任が増えたことによって、まちづくり条例の制定の契機がさらに高まりつつある。たとえば開発許可に際してこれまで要綱で対応していた部分を今後は可能な限り条例へ移行するなど、法令・条例・要綱を総合的に活用すべく、法令と条例の関係、条例と要綱の連携についても見直す作業が、行政手続法の流れも受け、活発となることが予想される。今後自治体のおかれた社会・経済・政治・行政環境それぞれによって、その対応の方向性は多様性を見せるであろう。
法制度改正から間もないこともあって、本特集では自治体における具体の制度設計の詳細をすべて明らかにするまでには至らなかったが、地域の実情を踏まえた制度設計を考える際の、ヒントを見つけていただければ幸いである。