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- 月刊誌『都市問題』
- 第 92 巻 第 10 号 / 2001年10月号
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特 集
特集 : 地方選挙と有権者の投票行動
内 容
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論文 都議選と参院選にみる有権者の政治意識 著者 小林 良彰 コバヤシヨシアキ 役職 慶應義塾大学法学部教授 特集名 地方選挙と有権者の投票行動 -
論文 有権者の投票行動と政策選好 著者 川上 和久 カワカミカズヒサ 役職 明治学院大学法学部教授 特集名 地方選挙と有権者の投票行動 -
論文 首長選挙における政党の役割−相乗り型選挙を手がかりとして 著者 河村 和徳 カワムラカズノリ 役職 金沢大学法学部助教授 特集名 地方選挙と有権者の投票行動 -
論文 無党派層の政治意識と政治参加−地方政治における無党派層の新たな役割 著者 本庄 美佳 鬼塚 尚子 ホンジョウミカ オニヅカナオコ 役職 21世紀政策研究所主任研究員 帝京大学文学部専任講師 特集名 地方選挙と有権者の投票行動 -
論文 都道府県知事選挙における選挙公約 著者 堤 英敬 ツツミヒデノリ 役職 香川大学法学部助教授 特集名 地方選挙と有権者の投票行動 -
論文 東京都議会議員選挙の投票率−制度、競争性、民主主義 著者 河野 勝 コウノマサル 役職 愛知学院大学情報社会政策学部専任講師 特集名 地方選挙と有権者の投票行動 -
論文 地方選挙の活性化と地域社会の役割−2001年名古屋市長選挙の事例 著者 森 正 モリタダシ 役職 愛知学院大学情報社会政策学部専任講師 特集名 地方選挙と有権者の投票行動
その他
- 図書紹介
時事問題
文献情報
特集 : 地方選挙と有権者の投票行動
- 近年、選挙に新風が吹き始めている。昨年の長野県、栃木県における無党派知事の誕生に続き、今年3月には千葉県においても、既成政党の支持・後援を受けない知事が誕生する結果となった。千葉県の無党派知事は同時に、大阪府、熊本県に続く3番目の女性知事でもあり、各選挙をめぐるこうした動きは、新しい時代の到来を感じさせる。
前世紀の最初にわが国の選挙制度は確立され、その後100年の間、時代の変遷とともに、制度および選挙を取り巻く環境は大きく変化してきた。中央集権・官僚主導の行政システムはナショナル・ミニマムの達成に寄与してきたものの、近年さまざまなひずみを生じはじめ、財政的側面とともに分権化の動きを加速する要因となった。最近では社会福祉分野をはじめとする多くの政策領域において、国から地方への権限移譲が進められており、地方自治体が政策形成・実施過程で果たすべき役割は飛躍的に拡大している。このような時代の変化とともに、国政選挙における有権者のさまざまな新しい投票行動が、地方選挙においても見られ始め、同時に、国政選挙とは異なる動きを見せる地方も数多く台頭してきている。最近の選挙における有権者の投票行動は、従来のそれとは異なる新しい流れを生み出すものであり、今世紀においては、住民の政策に対する意思表明として、さらなる変化を見せるものと予想される。
本特集では、近年の選挙における有権者の投票行動を、主に「地方選挙」をその題材として探ってみたい。つまり、選挙においては、“候補者の政策選好”と“有権者の投票行動”の2側面がともに重要であると考えられるが、ここではとくに有権者の政治参加意識および投票行動を中心とした企画をたてることとした。また、ひとくちに「選挙」という場合でも、“国政選挙”、“地方自治体の首長選挙”、“地方議会議員選挙”の3種類ではその性格が異なるため、それら選挙の性格の違いから生み出される有権者の投票行動の差異についても、とくに近年選挙において多大な影響力を持つに至った「無党派層」に焦点を当てて明らかにしていきたい。
まず、第一に、近年の選挙における有権者の投票行動について、国政・地方両選挙の結果をふまえて概観する。第二に、選挙における有権者の投票行動を考える上での重要な要因について論じ、以下に続く各論の分析視座について明確にする。第三に、「政党」という視点から、候補者の選挙活動およびその後の政策選好について考察する。第四に、「選挙公約」という視点から、候補者と有権者を結ぶ重要ルートの果たす役割と、そこで取り上げられる政策の変化について論ずる。第五に、「無党派層」に焦点をあて、近年の選挙に多大な影響を及ぼす彼らの動向を探り、第六に、「投票率」という視点から、選挙における有権者の動向を検討する。第七に、無党派層を選挙に取り込み、投票率を向上させるための施策を、「地域社会」の視点から考える。
地方分権の流れを受け、有権者の選挙を通じて表明される政策選好は、今後より重要なものになると考えられる。このような動きの中で、本特集が、地方自治の確立と地域社会の民主主義向上について考える一助となれば幸いである。