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- 月刊誌『都市問題』
- 第 92 巻 第 11 号 / 2001年11月号
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特 集
特集 : 土地政策と土地課税
内 容
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論文 都市づくりのための土地政策と土地税制−相続税制に焦点を当てて 著者 山崎 福寿 ヤマザキフクジュ 役職 上智大学経済学部教授 特集名 土地政策と土地課税 -
論文 日本における土地税制の現状 著者 米原 淳七郎 ヨネハラジュンシチロウ 役職 追手門学院大学経済学部教授 特集名 土地政策と土地課税 -
論文 地方税源としての固定資産税の課題 著者 野呂 昭朗 ノロアキロウ 役職 立教大学経済学部教授 特集名 土地政策と土地課税 -
論文 不動産証券化と都市経済 著者 篠原 正博 シノハラマサヒロ 役職 中央大学経済学部助教授 特集名 土地政策と土地課税 -
論文 土地課税が住宅市場に与える影響 著者 瀬古 美喜 セコミキ 役職 慶應義塾大学経済学部教授 特集名 土地政策と土地課税 -
論文 市街化区域内農地に対する「宅地並み課税」の効果 著者 寺井 公子 テライキミコ 役職 東京市政調査会研究員 特集名 土地政策と土地課税 -
論文 欧州評議会と地方自治体 著者 山崎 栄一 ヤマサキエイイチ 役職 国際観光振興会監事 -
論文 スリランカにおける地方分権化改革の展開−発展途上国における分権改革の実相 著者 船津 潤 フナツジュン 役職 横浜国立大学大学院国際社会科学研究科研究員
その他
- 図書紹介
時事問題
文献情報
特集 : 土地政策と土地課税
- 今月号の特集では、土地税制を中心に、政府による土地利用の規制と誘導等の視点も含めながら、長期的に見て望ましい土地政策のあり方を考える。土地政策は、ここでは以下の二つの点から、都市における重要な課題として位置づけられる。
第一に、土地は地方自治体にとって、重要な税源である。望ましい地方税の条件には、「公平、効率、簡素」といった租税の一般原則に加え、地方税固有の原則として、「応益性、普遍性、負担分任」が求められる。地方団体の行政サービスは、便益の範囲がある程度一定の地域に限定されるから、費用はできる限りその地域で、受益に応じて調達することが望ましい(応益性)。税源は、特定の地域に偏在しないことが望ましい(普遍性)。また、住民自治の視点から、たとえ小額であってもできるだけ多くの住民が負担を分かち合うことが望ましい(負担分任)。このような視点から眺めたとき、どの地域にもあまねく存在し、好況・不況に関わらず比較的安定した税収が望める土地からの税収は、地方公共団体にとって重要な財源である。
第二に、土地政策は、都市問題の解決のための重要な経済的手段である。土地は、道路や公共交通機関等の整備が伴って初めてその機能を発揮する。また、都市基盤整備は隣接する土地にも何らかの便益あるいは不便益をもたらし、その期待を反映して土地の価格を上昇あるいは低下させる。政府が土地の市場取引に介入できる第一の根拠は、このような土地の「公共性」によるものであり、環境悪化の抑制、あるいは土地の有効利用促進のために、政府による適切な土地政策が求められるのである。また、そのような土地政策の一環として、土地税制はどうあるべきかという考察が必要となる。
地価高騰の折には、投機的取引をいかに抑制するか、「持てる者」と「持たざる者」との間の格差をいかに是正するか、という視点で土地問題が議論されることが多かった。地価が比較的安定してきた現在、土地政策が地方自治体、およびそこに住まう住民の厚生にどのような効果を及ぼすのかを改めて考えることは、都市政策に長期的視点を与えるうえで意義あるものと考える。
このような問題意識に対応させて、本特集を次のように構成する。第一に、戦後の都市の土地問題を振り返り、とくに相続税制度が都市近郊農地の土地利用に与えた影響について議論する。第二に、わが国への土地税制の導入過程、導入のねらい、歴史的背景を概説する。第三に、地方分権化時代の自主財源としての土地課税の重要性を考察する。第四に、不動産証券化と都市経済の関係を論じる。第五に、土地課税が住宅市場に与える影響について考察する。第六に、都市近郊農地に対する固定資産税の宅地並み課税が土地利用にどのような影響を与えたかを分析する。