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- 月刊誌『都市問題』
- 第 93 巻 第 2 号 / 2002年02月号
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特 集
特集 : 危機管理と自治体組織
内 容
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論文 危機管理・減災と自治体 著者 河田 恵昭 カワタヨシアキ 役職 京都大学防災研究所巨大災害研究センター長・教授 特集名 危機管理と自治体組織 -
論文 危機管理と自治体組織 著者 橋本 信之 ハシモトノブユキ 役職 関西学院大学法学部教授 特集名 危機管理と自治体組織 -
論文 危機管理と計画 著者 マヤマタツシ 真山 達志 役職 同志社大学法学部教授 特集名 危機管理と自治体組織 -
論文 自治体組織の危機管理−危機発見の手法を中心に 著者 武井 勲 タケイイサオ 役職 青山学院大学経営学部・大学院経営学研究科教授 特集名 危機管理と自治体組織 -
論文 「東京」における危機の特性と危機管理 著者 井門 哲二 イカドテツジ 役職 東京都総務局災害対策部応急対策課長 特集名 危機管理と自治体組織 -
論文 「鹿角経済戦略会議」への取組とその推進について 著者 畠山 義孝 ハタケヤマヨシタカ 役職 秋田県鹿角市役所総務部企画課課長補佐 -
論文 条例委任と自治体の自律的意思決定−「政令で定める基準に従い」方式の考察 著者 田丸 大 タマルダイ 役職 東京市政調査会研究員
その他
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時事問題
文献情報
特集 : 危機管理と自治体組織
- 阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、タンカーの石油流出事故、原子力発電の臨界事故、コンピューター2000年問題、給食や食肉製品のO157検出事件、花火大会での陸橋事故、新宿雑居ビルの火災など、近年、予想を越える自然災害や人為災害は毎年のように起こっている。そして、これらの危機においては、原因究明・再発防止が強く訴えられるが、関係機関の初動体制が問題とされることも少なくない。
そこで本特集では、自治体における危機管理について考察を加えることにする。(なお、「危機」はさまざまな意味合いを持ち多様な使われ方をされるが、ここではさしあたり、突発的な不測事態〔自然災害や人為災害〕、「危機管理」はそのような危機への事前・中・事後の組織的対応と定義する。)
組織における意思決定は、一般に、直面する状況→状況定義→取るべき行動を規定するプログラムの探索→行動で表される。危機への対応は、時間の制約・プログラムの不備等の理由でこの回路が正常に機能しない状態であるとも言える。そこで、迅速・的確に新たなプログラムを開発する必要に迫られるわけである。他方、フィードバックを重視する視点あるいは危機を事前に管理する視点からは、不測事態の発生に備えて、人員の配置や権限の配分、情報ルートの開発・変更などに関して、あらかじめ組織をデザインすることが求められよう。もちろん危機に対して計画によって対処することも不可欠であるが、完全にコントロールできないのも危機の特性である。
要するに、危機管理においては、事前の計画に加えて、危機発生後の情報の伝達経路や意思決定権の配分をはじめとした組織の体制・行動のあり方(組織内・組織間も含めて)が、対応の成否を左右する重要な要素であることが理解できる。以上を踏まえ、本特集での危機管理は、主として自治体の組織や計画に着目することにする。
冒頭に示したように、危機管理が叫ばれ始めたのは1995年の阪神・淡路大震災以後であろう。本号では、震災以外の危機も念頭に置き、危機管理全般と自治体の組織や計画の関係性を一貫した切り口に構成を組んだ。すなわち、震災に限定することなくできる限り広範な種類の危機を想定したのである。しかしながら、実際に起きた具体の危機を対象に危機管理のあり方を論じる場面では、結果としてやはり阪神・淡路大震災が多く取り上げられることになった。とはいうものの、他の事例もふんだんに取り入れられているし、またそれらの事例をもとに抽出される論理や危機管理の手法そのものは、さまざまな危機に応用可能と考える。
自治体組織において、危機管理のあり方を模索する際に、本号を参照頂ければ幸いである。