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- 月刊誌『都市問題』
- 第 93 巻 第 8 号 / 2002年08月号
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特 集
特集 : 電子自治体の自律経営
内 容
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論文 自治体経営と協働の視点による電子自治体 著者 清原 慶子 キヨハラ ケイコ 役職 東京工科大学メディア学部長・教授 特集名 電子自治体の自律経営 -
論文 電子自治体の公共サービス―自治体CRM 著者 榎並 利博 エナミ トシヒロ 役職 富士通総研公共コンサルティング事業部マネジングコンサルタント 特集名 電子自治体の自律経営 -
論文 電子自治体と行政経営―改めて原点に立ち考える 著者 島田 達巳 シマダ タツミ 役職 摂南大学経営情報学部教授 特集名 電子自治体の自律経営 -
論文 情報バリアのない電子自治体 著者 池田 佳代子 イケダ カヨコ 役職 富士通総研公共コンサルティング事業部 特集名 電子自治体の自律経営 -
論文 アメリカの電子政府 著者 青山 公三 アオヤマ コウゾウ 役職 ニューヨーク行政研究所:IPA上席研究員 特集名 電子自治体の自律経営 -
論文 eガバメント政策の形成と課題―東南アジアのICT政策に見る 著者 工藤 裕子 クドウ ヒロコ 役職 早稲田大学教育学部専任講師 特集名 電子自治体の自律経営 -
論文 電子自治体への挑戦 著者 井堀 幹夫 イホリ ミキオ 役職 市川市企画部情報システム課参事 特集名 電子自治体の自律経営 -
論文 電子自治体化への志向と課題―静岡県を題材として 著者 河井 孝仁 カワイ タカヨシ 役職 静岡県企画部情報政策室主査 特集名 電子自治体の自律経営
その他
- 図書紹介
時事問題
文献情報
特集 : 電子自治体の自律経営
- 2000年1月に内閣から示された「e-Japan戦略」では、「5年以内に世界最先端のIT大国になる」ためには、まず情報通信基盤の構築が不可欠ということで、「住民基本台帳のネットワーク」「総合情報ネットワーク」などの整備を優先した。これが、これまで国家主導で電子自治体化が進められてきたゆえんである。
しかし電子自治体のより重要な側面は、それが自治体経営に及ぼすインパクトである。つまり、地方分権、情報公開、民営化など自治体経営をめぐる大きな転換期にあって、情報通信技術(IT)の広範な活用が自治体の自律経営への推進力となりうる状況にある。ITが社会全体に波及するに伴い、物的・金銭的な価値に比べて、情報の価値を高めること、そして、ITが個人の意思決定を支援するため分権的で内発的な性格とを持っていることなど社会全体に対するインパクトの広さと大きさを想起する必要がある。
電子自治体化は、自治体の事務能率の向上はもとより、公共サービスの質を向上させ、また情報の公開という面からアカウンタビリティを高めるなどにより、自治体が固有のコミュニティを基盤に固有の意思決定を行うという自治体の自律的経営に貢献することが期待されるものなのである。
ITを使った市民と行政の間の情報交換が浸透してくると、電子自治体化は、市民参加の政策形成や政策評価をおこなうという次元にまで高められる。すなわちデジタルデモクラシーの実現である。
デジタルデモクラシーのための基本的条件として、公務員や議員や首長が電子情報へのリテラシー(親和性)を向上させなくてはならないということがまずある。市民の側のデジタルデバイド(情報格差)を解消することは大前提である。さらに、議会と市民との情報チャンネル、首長(行政)と市民との情報チャンネルをどう組み合わせるのかという問題など、民主主義の意思決定プロセスそのものを問う問題に直面するであろう。デジタルデモクラシー実現に向けた課題に直面して、改めて、地方自治が民主主義の学校であることが問い直されるのである。
このような観点から「電子自治体の自律経営」というタイトルのもとに、自治体の政策形成過程、公共サービスの改善、行政経営、デジタルデバイド等の問題を論じるとともに、海外の電子自治体の事例、国内の先進的電子自治体の事例を紹介する。