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- 月刊誌『都市問題』
- 第 94 巻 第 3 号 / 2003年03月号
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特 集
特集 : 交通需要マネジメントとまちづくり
内 容
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論文 TDMの背景とその前提条件 著者 北村 隆一 キタムラ リュウイチ 役職 京都大学大学院工学研究科教授 特集名 交通需要マネジメントとまちづくり -
論文 TDMの環境対策としての役割 著者 原田 昇 ハラタ ノボル 役職 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 特集名 交通需要マネジメントとまちづくり -
論文 TDMの実現と社会的信頼 著者 藤井 聡 フジイ サトシ 役職 東京工業大学大学院理工学研究科助教授 特集名 交通需要マネジメントとまちづくり -
論文 自動車依存の小さいまちづくりの課題 著者 中村 文彦 ナカムラ フミヒコ 役職 横浜国立大学大学院環境情報研究院助教授 特集名 交通需要マネジメントとまちづくり -
論文 大都市におけるTDM−東京への適用 著者 太田 勝敏 オオタ カツトシ 役職 東京大学大学院工学系研究科教授 特集名 交通需要マネジメントとまちづくり -
論文 地方都市における中心市街地活性化とTDM−福井市の事例 著者 川上 洋司 カワカミ ヨウジ 役職 福井大学工学部教授 特集名 交通需要マネジメントとまちづくり -
論文 歴史的観光都市とTDM−川越市の事例を中心に 著者 久保田 尚 クボタ ヒサシ 役職 埼玉大学大学院理工学研究科助教授 特集名 交通需要マネジメントとまちづくり -
論文 コミュニティバスの先駆け―武蔵野市ムーバスの歩み 著者 佐藤 竺 サトウ アツシ 役職 成蹊大学名誉教授 -
論文 時代に対応できるか監査委員制度 著者 西巻 義通 ニシマキ ヨシミチ 役職 千葉市議会議員・前千葉市監査委員
その他
- 図書紹介
時事問題
文献情報
特集 : 交通需要マネジメントとまちづくり
- 道路混雑は世界中の都市に共通した問題であり、その解決のために、道路整備が進められてきた。しかし、自動車交通量は道路整備を上回るペースで増加し、現在に至るまで混雑は解消していない。また、住宅、商業・業務施設等が高密度に集積している都市部では、用地買収に必要な費用や関係者の合意形成の面から、迅速な道路整備は困難となっている。さらに、自動車交通の増加に伴って、排気ガスによる地球温暖化や健康被害などの環境問題は深刻の度を増している。
こうしたことから、自動車交通需要を所与のものと考え、これに見合うだけのインフラを整備しようとする従来の需要追随型の交通政策には疑問が呈されるようになった。インフラ整備によって交通容量を拡大するばかりでなく、自動車交通需要それ自体を適正なレベルにコントロールすべきではないか、という考え方が有力になってきたのである。これが、「交通需要マネジメント(Transportation Demand Management:TDM)」の考え方であり、自動車の効率的利用、交通手段の変更、交通発生源の調整などの方法が提案されている。
このように、TDMは都市交通問題の解決方策として提案されたものであるが、まちづくりとも密接な関係があるように思われる。たとえば、道路混雑を根本的に解決するためには、既存の都市構造を前提とした施策だけでは効果に限界があり、まちづくりの段階から交通を考慮し、極力自動車交通に依存しないで済むまちをつくることが必要である。また、近年、地方都市における中心市街地の活性化が重要課題となっているが、その解決のためには、商業面での魅力向上とともに、アクセスの改善が必要である。そこで、本特集では、TDMについて、まちづくりとの関連にも留意しつつ、その可能性を探ることとしたい。
まず、自動車の普及が都市にどのような影響をもたらしたか、これまでの歴史を振り返り、TDMが提唱されるようになった背景とその前提条件について考える。その上で、TDMの環境対策としての役割と、TDMの実施に当たって市民の理解と協力を得る方策について検討する。そして、これに続いて、まちづくりの側面から、自動車への依存を小さくする方策について考察を加える。次に、交通問題は都市の規模・性格に応じて異なることから、大都市、地方都市、歴史観光都市におけるTDMの進め方について、東京、福井、川越の事例を眺める。ここでは、TDMを交通政策としてとらえるばかりでなく、中心市街地の活性化や都市の魅力向上といった都市政策の側面を含めて広くとらえ、検討することとしたい。