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- 月刊誌『都市問題』
- 第 94 巻 第 4 号 / 2003年04月号
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特 集
特集 : 都市内分権と住民自治
内 容
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論文 都市内分権の現在・過去・未来 著者 岩崎 恭典 イワサキ ヤスノリ 役職 四日市大学総合政策学部教授 特集名 都市内分権と住民自治 -
論文 各地にみる住民自治活動と都市内分権の可能性 著者 田嶋 義介 タジマ ヨシスケ 役職 島根県立大学総合政策学部教授 特集名 都市内分権と住民自治 -
論文 都市内分権が促す自治体議会のパラダイム転換 著者 江藤 俊昭 エトウ トシアキ 役職 山梨学院大学法学部教授 特集名 都市内分権と住民自治 -
論文 小さな自治への道程 著者 延命 敏勝 エンメイ トシカツ 役職 群馬県小さな自治政策研究会構成員 特集名 都市内分権と住民自治 -
論文 政令指定都市における行政区の現況と改革の展望について―市民社会の変容に伴う柔軟な機能改編を 著者 伊藤 和良 イトウ カズヨシ 役職 川崎市総合企画局政策部副主幹 特集名 都市内分権と住民自治 -
論文 都市内分権―市民との協働をめざして 著者 福嶋 浩彦 フクシマ ヒロヒコ 役職 我孫子市長 特集名 都市内分権と住民自治 -
論文 市民が担う新しい公・共性―ワーカーズ・コレクティブの運動・事業の実践から 著者 菅原 順子 スガハラ ジュンコ 役職 神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会事務局 特集名 都市内分権と住民自治 -
論文 河川の流域総合管理実現に向けた法政策の提言―河川管理法制の大転換を求めて 著者 三好 規正 ミヨシ ノリマサ 役職 愛媛県総務部市町村課係長
その他
- 図書紹介
時事問題
文献情報
特集 : 都市内分権と住民自治
- 最近の地方自治体をめぐる諸情勢は、われわれに改めて原点に立ち還ってみることを促しているように思われる。成熟した都市型社会の到来により市民の公共需要が多様化するとともにその欲求水準も高まり、また1980年代後半から目立ち始めた市民の公共活動、参政活動は成熟社会の新しい公共の担い手として注目を集めつつある。そのようななかで地方分権推進一括法の施行により、これまで以上に主体性をもって行財政運営を進めていくことが求められている地方自治体は、厳しい試行錯誤を余儀なくされているようである。一方で長引く経済の低成長がもたらす政策資源の著しい制約によって、経営の効率化が求められつつある。また他方ではいわゆる行政国家、「福祉国家」の流れのなかで公共セクターとして担ってきた伝統型の公共性のゆらぎと、社会の新しい主体が担う新しい公共性の展開の狭間で、地方自治体の役割の動揺や相対化が目立ち始めているからである。
このように地方自治体の公共サービスの、いわば実効性と正統性とが問い直されるなかで、基礎自治体、とりわけ人口集積の進んだ都市自治体が自らの存在意義を高めていくためには、思いきって都市内分権を進め、住民自治の原点を強化していくことが必要になってきている。都市地域内部の市民に最も身近な行政機構への行財政権限の移譲、都市コミュニティと自治会の活動、NPO活動などへの公−民分権やそれへの積極的支援(エンパワメント)を実現することが求められているからである。このことによって市民生活の現場での公共需要の総合化と選択、優先順位の決定、これらに関する公共の合意形成がスムーズになり、行政と市民との的確な協働も期待できると思われる。また都市内分権を通じた近隣の生活圏での市民自治活動の活性化と、これらと市の施策との協働関係を確立していくことは、市民と自治体との公共領域での責任関係を明らかにするとともに、昨今の市町村合併の動きのなかで混迷の度を深めている市町村の適正規模やそのあるべき機能をめぐる議論にも、有効な一石を投じることが期待できるのではないであろうか。
以上の観点に立って、最近の市町村合併や近隣政府をめぐる議論を踏まえながら、都市内分権の必要性と可能性に検討を加えてみたい。市民に身近な地域での住民自治の求めと市民社会の公共需要に効率的に対応する必要とのバランスに関する理論的検討、市民に身近なところで現に展開しつつある「小さな政治」の実状と課題、都市内分権によって首長部局のキメ細かな市民との協働が進むなかでの都市自治体議会のあり方、などを広く取り上げてみることにしたい。またこれらの問題を広域自治体や都市の基礎自治体の立場から、あるいはいくつかの政策分野を通じて眺めてみることも必要になると思われる。