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- 月刊誌『都市問題』
- 第 94 巻 第 5 号 / 2003年05月号
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特 集
特集 : 自治体におけるリスクマネジメント
内 容
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論文 自治体とリスクマネジメント 著者 大貫 啓行 オオヌキ ヒロユキ 役職 麗澤大学国際経済学部教授 特集名 自治体におけるリスクマネジメント -
論文 リスクマネジメントにおける行政と住民・企業の連携−デジタル・メディアを活用した災害対応の実態と課題 著者 干川 剛史 ホシカワ ツヨシ 役職 大妻女子大学人間関係学部助教授 特集名 自治体におけるリスクマネジメント -
論文 リスクマネジメントと地域福祉システムの構築 著者 原田 正樹 ハラダ マサキ 役職 東京国際大学人間社会学部助教授 特集名 自治体におけるリスクマネジメント -
論文 自治体とリスクコミュニケーション 著者 菊間 一郎 キクマ イチロウ 役職 神奈川県自治総合研究センター研究部副主幹 特集名 自治体におけるリスクマネジメント -
論文 自治体における環境マネジメント 著者 河野 正男 カワノ マサオ 役職 中央大学経済学部教授 特集名 自治体におけるリスクマネジメント -
論文 自治体のリスクマネジメントと都市環境監査―阪神・淡路大震災の教訓をどのように活かすか 著者 仲上 健一 ナカガミ ケンイチ 役職 立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部教授 特集名 自治体におけるリスクマネジメント -
論文 自治体環境規制をめぐる制度変化の影響とその帰結―大気汚染防止規制に見る分権化・条例化の動向を中心に 著者 青木 一益 アオキ カズマス 役職 (財)電力中央研究所経済社会研究所特別契約研究員
その他
- 図書紹介
時事問題
文献情報
特集 : 自治体におけるリスクマネジメント
- 科学技術が進歩し、高度に産業化・情報化が進む今日の社会において、人びとは自らの「環境」「健康」「安全」等に関して高い問題意識を持つようになった。産業構造や生活環境の変化に伴い、従来とは異なるさまざまな新しいリスクが市民の生活を脅かすようになったことが、この高い危機意識の根底にあると考えられる。同時に、情報化により、従来知ることが困難であった情報や高度な専門知識を市民が容易に得ることが可能になった点も、市民意識の高まりを下支えする基盤となっていると言えよう。
このようなリスクに対する市民意識の高まりを受け、近年、多様なリスクマネジメントが行われている。それらの活動の中では、危機発生後に、発生源たる企業や行政が、組織や社会的価値への影響やダメージを最小限に抑えて危機を脱するために行う広報活動、救助活動、復興支援活動など、従来その典型と考えられてきた危機管理にとどまらず、リスクの回避と低減を図るための、予防的・事前的な一連の対策もまた、同様に重要性を増しているのである。たとえば、対象施設の耐震化や安全装置の多重化、平常時における社員教育、地域住民への広報など、より幅広い活動がこれに当たる。
このようなリスクマネジメントは、従来中央政府を中心に進められてきたが、地方分権の流れと市民意識の高まりを受け、今後基礎自治体レベルでの取組がますます重要になる。これは、市民の日常生活を脅かすリスクの予防・軽減については、企業や地域コミュニティ、さらには市民一人ひとりの協力が不可欠であるため、住民にもっとも身近な自治体である市町村が、その中心的役割を果たす必要性が高まっているからである。
本特集は、コミュニティにおけるリスクマネジメントについて、さまざまな政策領域を視野に入れながら検討を行うものである。市民の日常生活を脅かす身近なリスクに焦点を当て、それを軽減・予防していくためのさまざまな取組について、地方自治体、企業、市民など諸アクターの協力関係を視野に入れながら考察を進める。とくに環境、福祉、防災などの政策領域については、具体的な自治体における実践事例をもとに検討する。また、近年リスクマネジメントの重要な手法として注目されるリスクコミュニケーションについても考察し、今後の危機管理およびリスク回避体制の充実のために必要な、諸施策について明確化する。
地方自治体の、リスクマネジメントにおける役割がより重要性を高めている現在、本特集が、より安全で快適な地域社会を形成する一助となれば幸いである。