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- 月刊誌『都市問題』
- 第 94 巻 第 6 号 / 2003年06月号
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特 集
特集 : 現代大都市論
内 容
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論文 再都市化段階の世界都市ロンドンと東京の問題と政策 著者 成田 孝三 ナリタ コウゾウ 役職 大阪商業大学大学院地域政策学研究科教授 特集名 現代大都市論 -
論文 現代大都市の分極化と21世紀への課題 著者 園部 雅久 ソノベ マサヒサ 役職 上智大学文学部教授 特集名 現代大都市論 -
論文 21世紀の大都市像 著者 大久保 昌一 オオクボ マサカズ 役職 大阪大学名誉教授 特集名 現代大都市論 -
論文 少数派の都市論の教訓―「都市再生」論議の出発点として 著者 本間 義人 ホンマ ヨシヒト 役職 法政大学現代福祉学部教授 特集名 現代大都市論 -
論文 東京における自動車公害対策と被害者救済−大気汚染公害訴訟の提起する課題 著者 除本 理史 ヨケモト マサフミ 役職 東京経済大学経済学部助教授 -
論文 イギリスの都市再生―世界都市ロンドンの経験 著者 早田 宰 ソウダ オサム 役職 早稲田大学社会科学部教授
その他
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時事問題
文献情報
特集 : 現代大都市論
- 現在進行中の「都市再生」政策は、ビジョン不在の都市開発戦略といわれ、各方面から批判が出されている。また、現在は時代の転換期にあり、都市政策についても、かつての政策目標は時代にあわなくなってきているといわれる。いわば現代は目標喪失の時代であり、このような時代に求められているのは、技術的な方法論ではなく、新しい目標を提示するための新たなる思想・哲学・倫理であり、これらを踏まえた新しい都市の枠組みをつくることであるという認識が共有されつつある。
本特集では、高層ビルの乱立がはじまっている東京をはじめとする「世界都市」化した大都市を批判的検討の対象として、各分野の論者に議論していただきながら新しい大都市論の提示を試みていく。
現代の大都市は、反都市化から再都市化の段階へ移行しつつある。1980年代に入って欧米や日本で「世界都市」論の隆盛をみた背景には、1960年代から1970年代にかけて顕著になった反都市化の潮流のなかで衰退を余儀なくされてきた大都市が、「世界都市」化をてことして再生を図ろうとした状況があり、こうした「世界都市」化が、分極化という新しい都市問題をもたらしたのである。
まず、新しい都市の貧困問題をはじめとする、再都市化段階にある大都市の諸問題について、ロンドン、東京を事例都市として考察し、今後の大都市政策はどうあるべきなのか、その理念の提示を試みる。
つぎに、職業階層、所得階層、新しい都市の貧困層という3つの観点から分極化仮説を検証すると、東京はニューヨークやロンドンと比較して桁違いに平等な都市であるとされるが、その東京について、分極化仮説の詳細な検証をおこなう。その上で、東京における分極化の兆しを明らかにするとともに、分極化の社会的意味について考察し、大都市東京の将来的課題について論じる。
さらに、既成の都市論を枠づけてきたパラダイムの解体を迫った大事件として、1995年の阪神・淡路大震災があるが、そこから啓示を得た都市存立の基盤としての自然のコンセプトと、それに適合する都市像の要件について整理・考察する。
最後に、主に日本における代表的な都市論者たちを取り上げ、彼らから今日学ぶべき視点、具体的には「世界都市」化政策の結果として生じたとされる、大都市における新しい貧困問題等に対する視点や、これからの大都市のあり方に対する視座を示していく。
なお、各論者には、新しい都市像提示にともなう現実の困難や、大都市においては持続可能な発展というのはありえず、長期的展望に立てば、いずれ衰退に至ってしまうといった視点の展開の可能性もふまえた上で、あえて現代大都市について大胆に論じていただいた。
迷走する大都市東京のあり方に一石を投じる特集号となれば幸いである。