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- 月刊誌『都市問題』
- 第 94 巻 第 10 号 / 2003年10月号
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特 集
特集 : 基礎自治体における総合計画の限界と可能性
内 容
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論文 自治体計画行政の現状と課題−今後の市町村総合計画について 著者 新川 達郎 ニイカワ タツロウ 役職 同志社大学大学院総合政策科学研究科教授 特集名 基礎自治体における総合計画の限界と可能性 -
論文 自治体における政治行政の流動化と計画現象 著者 打越 綾子 ウチコシ アヤコ 役職 成城大学法学部専任講師 特集名 基礎自治体における総合計画の限界と可能性 -
論文 総合計画から戦略計画へ−マネジメント・ツールとしての発展へ 著者 大住 莊四郎 オオスミ ソウシロウ 役職 新潟大学経済学部教授 特集名 基礎自治体における総合計画の限界と可能性 -
論文 行政のコミュニケーションを担う総合計画 著者 西尾 隆 ニシオ タカシ 役職 国際基督教大学社会科学科教授 特集名 基礎自治体における総合計画の限界と可能性 -
論文 行政マネジメントの一環としての総合計画とマニフェスト 著者 久田 伸子 青山 崇 ヒサダ ノブコ アオヤマ タカシ 役職 岐阜県多治見市企画部企画課主任 岐阜県多治見市都市計画部都市計画課課長 特集名 基礎自治体における総合計画の限界と可能性 -
論文 総合計画制度の原型・変容・課題 著者 松井 望 マツイ ノゾミ 役職 日本都市センター研究室研究員 特集名 基礎自治体における総合計画の限界と可能性 -
論文 第29回「東京市政調査会藤田賞」選考経過報告 著者 吉岡 健次 ヨシオカ ケンジ 役職 東京市政調査会藤田賞選考委員会委員長 -
論文 第29回「東京市政調査会藤田賞」受賞のことば 著者 高木 健二 重松 正史 池上 岳彦 タカギ ケンジ シゲマツ マサフミ イケガミ タケヒコ 役職 地方自治総合研究所研究員 和歌山工業高等専門学校助教授 立教大学経済学部教授
その他
- 時事問題
文献情報
特集 : 基礎自治体における総合計画の限界と可能性
- 基礎自治体の計画行政にとって1969年は画期的な年であったのだろうか。計画的な行政運営を図るため基本構想を定めること、そしてこの基本構想は議会の議決を経ることが地方自治法に法制化された。以後30年を経て、基礎自治体において基本構想をもつことは当然のことのようになったのだが、総合計画が定着したかのようにみえながら、実はさまざまな問題を抱えて今日に至っているといったほうが妥当であろう。
「内容が総花的かつ抽象的で、政策をリードする力に欠ける」「計画は作ったものの、計画にこめられた政策の効果の検証がなされない」「計画策定過程に市民参加が行われるようになったものの、議会の役割がはっきりしない」などは当初から想定され指摘され続けてきた事項である。
それではこの30年の間に、総合計画導入のもくろみに照らして、何が達成され、何が達成されず、またどんな新たな課題が生じているのか、これらを検討するという意図で本特集を企画した。
総合計画のパフォーマンスは、総合計画の型と総合計画の機能の両面から評価することができよう。総合計画の型は、基本構想―基本計画―実施計画という3段階構成をもち、それぞれに長期、中期、短期の計画期間が割り当てられる。基本計画や実施計画のレベルで予算との連携が図られ、予算過程の中で総合計画の進行管理がなされ、基本構想は、当初の議会による議決以降は政治や行政の表舞台から消えるという型が定着してきた。確かに、総合計画の型が定着する中で、行政組織における計画策定技術やコミュニケーション力は改善されたのであるが、型の定着化とともに総合計画の諸機能は低下した、あるいはインパクトがなくなってきたのではないか。たとえば1990年代における地方財政危機下の地方行政、地方分権化にむけた地方行政という新たな課題に対して、従来の総合計画はほとんど先見性と先導性を示せなかった。
こうしたなかで、自立的自主的な地方行政を行うこと、限られた資源を最適に配分するための調整を行うこと、住民との協働を方向づける地域の目標を設定すること、などの緊要性が認識され、改めて計画行政の役割が認識されるようになった。これらの要請に応えるのは、従来型の総合計画で可能であるのか、それとも型を離れて計画行政の機能を再定義することからあらたな計画を生み出すべきなのか、これが今日問われている計画行政の課題なのである。
本特集では、〓総合計画30年間の総括〓計画行政の新たな展開〓住民とのコミュニケーションという視座から、各分野の研究者、実務家に執筆いただいた。基礎自治体の総合計画の評価を通じて、自治体の計画行政のあり方を問う今後の議論への問題提起となることを期待するものである。