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- 月刊誌『都市問題』
- 第 95 巻 第 3 号 / 2004年03月号
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特 集
特集 : 分権化と地方税ー世界の動向と日本のいま
内 容
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論文 地方税・福祉国家・グローバリゼイション 著者 林 健久 ハヤシ タケヒサ 役職 東京大学名誉教授 特集名 分権化と地方税ー世界の動向と日本のいま -
論文 イギリスの分権化と地方税制改革 著者 星野 泉 ホシノ イズミ 役職 明治大学政治経済学部教授 特集名 分権化と地方税ー世界の動向と日本のいま -
論文 アメリカ州・地方税の現状と課題 著者 片桐 正俊 カタギリ マサトシ 役職 中央大学経済学部教授 特集名 分権化と地方税ー世界の動向と日本のいま -
論文 ドイツ市町村税の改革をめぐって−営業税と所得税 著者 関野 満夫 セキノ ミツオ 役職 中央大学経済学部教授 特集名 分権化と地方税ー世界の動向と日本のいま -
論文 フランスの憲法改正と分権改革法−「2003年地方分権改革」 著者 青木 宗明 アオキ ムネアキ 役職 神奈川大学経営学部教授 特集名 分権化と地方税ー世界の動向と日本のいま -
論文 スウェーデンの地方分権と地方財政 著者 飯野 靖四 イイノ ヤスシ 役職 慶応大学経済学部教授 特集名 分権化と地方税ー世界の動向と日本のいま -
論文 地方債計画の形成過程に見る戦後地方債政策の原点 著者 井手 英策 イデ エイサク 役職 横浜国立大学大学院国際社会科学研究科助教授
その他
- 時事問題
文献情報
特集 : 分権化と地方税ー世界の動向と日本のいま
- 周知のとおり、わが国における地方分権改革の歩みは、いわゆる「三位一体の改革」という形で地方財源の問題に焦点が当てられる段階に立ちいたった。今後の改革の行方はいまだ不透明であるが、その決着のありよういかんで1990年代から積み重ねられてきた地方分権改革の実質が左右されることはいうまでもない。
ところで分権的地方財政の基盤を確立するためには、なによりも地方税を中心とする地方自主財源の十分かつ適切な確保が必須の課題であるが、周知のとおりわが国の場合、それは国税の地方への移譲を必要とする。そして最近、税源移譲問題が具体性をおびてゆくにつれ、改革論議はより現実的かつ切実な問題に重点を移してきたといえよう。国庫補助・負担金の削減と地方交付税の縮小に長期不況が重なっての地方収入の減少が税源移譲に先行し、地方財政運営が厳しさを増すなかで、税源移譲の具体的オプションが絞られてゆく。政治日程上も地方財政運営上も待ったなしの状況がこうして生み出され、改革論議の収斂を急がせているように感じられる。
さて、本号ではこうした現況に逆行するかのごときテーマを掲げた。というのも、近年の主要先進諸国における地方税を中心とした地方自主財源の問題について論じていただくことで、いまや狭まった選択肢に閉じ込められようとしているわが国の地方税改革論議を相対化することを目しているのである。
もちろん、各国それぞれの中央・地方を通じた財政構造や政治・経済・社会的条件があるため、そこから引き出される政策的含意は直接的なものではない。しかし、そうした多様性に対する理解をもとに、現在のわが国における地方分権改革と税源移譲問題の特質を意識することは重要であろう。つまり、そこからわが国における論点形成がはらむ理論的前提や制度的制約を見出すような、ある種の間接的ではあるが有益な示唆を導くことも可能ではないだろうか。
このようなやや迂遠な企画の産物としてここに所収する論考は、それぞれ多様なコンテキストに対する多様な視点を含みつつ、各論者の個性を表しているように思う。もっとも、それらがいかなるメッセージを発しているのかについては、読者諸氏のご判断にお任せしたい。