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- 月刊誌『都市問題』
- 第 95 巻 第 5 号 / 2004年05月号
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特 集
特集 : 都市自治体政策法務の可能性
内 容
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論文 自治体の法環境と政策法務 著者 北村 喜宣 キタムラ ヨシノブ 役職 上智大学法学部教授 特集名 都市自治体政策法務の可能性 -
論文 東京都庁における法務管理―東京都庁総務局法務部 著者 金井 利之 カナイ トシユキ 役職 東京大学法学部助教授 特集名 都市自治体政策法務の可能性 -
論文 市民自治の制度化と政策法務―自治体ガバナンスの構成転換に向けて 著者 今井 照 イマイ アキラ 役職 福島大学行政社会学部教授 特集名 都市自治体政策法務の可能性 -
論文 地域社会の合意形成と自治体政策法務 著者 名和田 是彦 ナワタ ヨシヒコ 役職 東京都立大学法学部教授 特集名 都市自治体政策法務の可能性 -
論文 自治体政策法務と訴訟法務 著者 天野 巡一 アマノ ジュンイチ 役職 岩手県立大学総合政策学部教授 特集名 都市自治体政策法務の可能性 -
論文 新しい法環境に対応した自治体職員の政策法務研修 著者 加藤 良重 カトウ ヨシシゲ 役職 東京都市町村職員研修所特別講師 特集名 都市自治体政策法務の可能性
その他
- 図書紹介
時事問題
文献情報
特集 : 都市自治体政策法務の可能性
- 最近、都市自治体が担当する法務は、ひとつのパラダイム転換といっても過言ではない変容を遂げつつあると思われる。それは、従来型の@自治体例規類の制定・改廃に伴う技術的法制執務事務、A中央政府の示すマニュアル検索中心の法律適用事務、B危機管理中心の訴訟事務、からの重心移動である。これに代わって重視されているのが、@自治体の政策形成からその執行、評価、紛争処理のすべての過程において自治立法権、自主解釈権を行使し、A政策の必要性、有効性、正統性を高いレベルで維持しながら、B法的紛争に際しては政策主張を行う、自治・分権型の政策法務であろう。
このパラダイム転換は、都市自治体が直面する法環境の著しい変容によるところが大きい。都市自治体は自治・分権の流れのなかで、成熟しつつある市民社会が生み出す多種多様な政策課題に、自らの責任で対応していかなければならない。そこで従来のように中央政府が示すマニュアルに依存するのではなく、拠るべき政策公準としてローカル・ルールを重視し、これを活用しながら主体的、創造的に政策判断を下すことが必要になったからである。
本特集では、以上のようなパラダイム転換に焦点をあわせ、まず都市自治体を取り巻く法環境はどのようなものであり、その下で政策法務を的確に運営していくための課題は何かを幅広く探る。次に具体的な政策課題解決に向けてローカル・ルールを運用する政策法務の可能性を、理論と実態の両面から具体的に検証する。また、最近ますます活発になってきている市民の公共活動を受けて、市民自治の制度化を進めコミュニティの意思形成を支援するに当たって、自治体の政策法務はどのような役割を果たすことができるのかを考えてみたい。さて、都市自治体法務の最大のパラダイム転換のひとつが生じている自治体訴訟をめぐる分野では、伝統的な危機管理型の「狭義の予防法務」がなぜ政策対応型の政策法務へと転換を迫られているのか、訴訟、係争法務の問題をなぜ都市自治体の政策過程全体を改善する課題ととらえなおす必要があるのかを検証してみよう。そして最後に、正にこのような政策過程全体を通じて重要性を増しつつある政策法務を担う職員の問題に注目してみたい。複雑な政策要件が錯綜する法環境の下で、ローカル・ルールを的確に取り扱うことのできる有能な政策法務担当職員をどのように養成していったらよいのか、豊富な研修経験に学びながら、検討を加えることにしたい。
本特集が政策法務の活性化と取り組んでいる都市自治体の現場に、何らかのヒントを提供することができれば幸いである。