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- 月刊誌『都市問題』
- 第 95 巻 第 12 号 / 2004年12月号
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特 集
特集 : 自治体職員の「やわらかい」任用制度
内 容
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論文 自治体職員の任用をめぐる制度的環境 著者 稲継 裕昭 イナツグ ヒロアキ 役職 大阪市立大学大学院法学研究科教授 特集名 自治体職員の「やわらかい」任用制度 -
論文 地方公務員制度における任用の多様化・弾力化の限界 著者 西村 美香 ニシムラ ミカ 役職 成蹊大学法学部助教授 特集名 自治体職員の「やわらかい」任用制度 -
論文 瀬戸市における職員任用政策の展開 著者 川手 摂 カワテ ショウ 役職 東京市政調査会研究員 特集名 自治体職員の「やわらかい」任用制度 -
論文 希望降任制度の実態と機能−枚方市を中心に 著者 近藤 真理子 コンドウ マリコ 役職 市民ライター 特集名 自治体職員の「やわらかい」任用制度 -
論文 志木市『行政パートナー』の光と影 著者 田中 義政 タナカ ヨシマサ 役職 作家・エッセイスト 特集名 自治体職員の「やわらかい」任用制度 -
論文 滝沢村の課長選挙−「日本一の村」が挑戦する改革の意味 著者 浅水 智紀 アサミズ トモノリ 役職 読売新聞盛岡支局記者 特集名 自治体職員の「やわらかい」任用制度 -
論文 あらためて、在日コリアンが公務員になる意味 著者 黄 光男 ファン グァンナム 役職 尼崎市役所主任 特集名 自治体職員の「やわらかい」任用制度
その他
- 時事問題
文献情報
2004年(第95巻)総目次
特集 : 自治体職員の「やわらかい」任用制度
- 「改革の時代」に、公務員制度改革は取り残された。2001年末の「公務員制度改革大綱」以来、国家公務員制度改革は迷走に迷走を重ね、一部で報じられていた第161臨時国会への改革関連諸法案の提出もかなわぬ情勢である。これに対し総務省は、独自路線で地方公務員制度改革の取組を行ってきた。すなわち、旧自治省が97年に立ち上げた地方公務員制度調査研究会は、昨年12月末に「分権新時代の地方公務員制度」なる報告書をまとめ、任用・勤務形態を多様化するための具体的な制度設計を示し、これを踏まえて、本年6月に地方公務員法と任期付採用法が改正されたのである。しかし、現在のところ改革の動きはこれにとどまる。
だが一方で、地方公務員法は大部分で大枠・原則の設定にとどまり、したがって自治体が制度設計を含めた権限を幅広く有していると言われる。これに注目すれば、中央政府による法制度の変更を待たずとも、自治体の意識改革と、制度の独自設計・独自運用の実践によって改革を進めうるということになる。中央政府による法制度の変更を、中央主導の「地方公務員制度改革」とするならば、この自治体独自の創意工夫による改革は、地域先導の「自治体職員制度改革」であると捉えられよう。
自治体職員制度改革の中でとりわけ重要なのは、任用の局面である。世はまさに分権の時代。今後ますます独自性・先進性の発揮を求められる各自治体にとって、すぐれた自治体政策を立案し、実施していく職員を、「自己決定・自己責任」で任用することの重要性は今更云々するまでもない。その際に重大な障害となるのは、長い年月の間に生み出された、制度の硬直性・画一性・閉鎖性と、そこから生じる人事の惰性・先例踏襲という問題である。そこで、すでに各地の先進的な自治体では、このような現状を打破し、職員の任用に柔軟性・多様性・透明性を取り入れることをめざす人事政策の試みが始められている。ここではそのような取組を総括して、「やわらかい」任用制度と呼ぶことにした。
以上を踏まえて本企画は、@自治体職員の任用制度が置かれている制度的な環境を明らかにし(第1論文および第2論文)、それを踏まえて、A「やわらかい」任用制度の具体的事例を紹介する(第3論文〜第7論文)。Aについては、キレイゴトの羅列に終始し、あたかもその施策が副作用のない万能薬であるかのような印象を与えぬよう配慮した。執筆者にさまざまなバックグラウンドを持つ「第三者」を選び、当該自治体の担当者を一人も含めなかったことは、その配慮の端的な表れである。改革とは不断の努力なのであり、施策の導入だけで完結するような改革など存在しない。そのことを強調するために、客観的・批判的視点が必要不可欠であるというのが企画者の意図するところである。
ともあれ本企画が、自治体問題に関心を寄せる「市民」や、改革の意欲を持ち、一歩踏み出そうとしている自治体関係者に、「考える材料」を提供できればと切に願う。 (川手 摂)